Posted by shimotaka on May 23, 1998 at 10:29:14:
In Reply to: Amiga Inc は第2のNEXT社になっちゃう? posted by 白乾児 on May 18, 1998 at 03:41:28:
/*phase5とhaage & partnerの関係修復*/
この文章は結構長い上に、僕の主観と推測に多くを負っていますので、その分を差っ引いて読んで下さい。
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5月18付けで、両者が協力関係にあることが20日づけの
cucugのnewsページで明らかに
されています。「両者の争いは過去のものであり、方式をめぐっては引き続き検討中」とのこと。
この動きは土曜日に会合をもたれたということですので、金曜日のAmiga Incのアナウンスメントの翌日には早
速会合をもったということになる。想像に難くないことですが、
Fabian Colin氏のcomp.sys.amiga.miscの投稿
によれば、発表を聞いたWDietrich氏は「ナーバスになって、AIncはハードウェア会社をつぶす気なのかと問いただす」一幕もあったそうです。
この発表までに、次期CPUはPowerPCであり、68kを併用したdual processorでいくとの情報も流れたり、先
のフィンランドのSakuの会合でのペトロの発言に、特定の会社にアミーガを牛耳らせたりしない旨の発言が飛び
出したりしました。
ご存じない方のために一応補足すると、phase5はドイツのメーカーでアミーガ用のアクセラレータや、ビデオ
カードを製造している会社で、他にもマック用のグラフィックボードも製造していて、pre/boxというアミーガ互
換機、A/boxという独自のPPCベースのマシンの製造を目論んでいます。
ここ数箇月来、同社はアミーガコミュニティで酷く批判されてきました。その最大の争点がアミーガの次期標
準CPUであるPPCの開発をめぐって共同作業をするはずだったHaage and Partnerと、その処理方式を巡って対
立、仲違いしたことに端をはっしています。また一部のデベロッパが同社への不信を表明したりと、いうことも
あり、NewsGroupやMLではその是非をめぐってほとんど感情論にまで達していました。
認識しておかねばならないことは、お金をかせぐ稼がないという次元の問題は除外すると、
1.phase5はアミーガ界の最大の開発能力と生産力をもっていること
2.同社がその体質的な問題として、傲慢さが露骨にある、と一部のデベロッパ、ユーザが考えていること
3.phase5のプレゼンスが大きくなり過ぎて、他の中小のメーカーが介入できず、結果としてアミーガの活性化を
阻害するのではないか、ということ
に落ち着くのではないでしょうか。
事実上PPCの製造販売をしているのはphase5のみであり、他の会社もPPCアクセラレータの製造を表明して
いるものの発表できず、処理方式も同社の独占となれば(当然その使用は同社へののロイヤリティの支払を必要と
する)、MLで流れた刺激的な見出し「phase5はアミーガ界のM$である」というのも少しも大げさではなかった
のです。
それが今回の一件で、当然自分達が玉座に座れると思っていたら、Amiga Incに尻を蹴飛ばされるような形に
なってしまったわけです。
・WoAのアナウンスを巡る記事
いまいちど振り返って、現在コミュニティで混乱を引き起こしている各記事について、整理すべきでしょう。
kick off the future of amiga
がAmiga Inc /Internationalの公式発表となるでしょうが、正直ここからはほとんどつまびらかになっているも
のはありません。当日の会場ではっきり明言されているとおぼしきことも、ここではほとんど表明されてはいな
いので、他の記事とのギャップになりよりもとまどうことになります。僕が参照したのは以下の記事です。
5/16, Story form Philadelphia Inquirer
5/15, Plans forNew AmigaEmerge
wierd Magazine Coverage of the Announcement
これらの記事では1.AMigaがMotololaを捨てること、2.マシンの開発を行わないOS屋になること、に力点がお
かれています。結局のところ、彼らは分かりやすいセンセーショナルな部分に、つまりMotolola vs Intel、Microsoft
支配の業界への抵抗、興味をおいているにすぎないという印象を受けます。恐らく彼らの興味の対象は、
現在最もホットな業界のビッグ4だか5だかに入るGatewayという会社なのでしょう。さもなければ、「昔はアミーガ
というとても魅力的なマシンがあったんだよ」という昔話が埋め草的な記事として提示されるくらいのものです。
これに対して、先のFabrice Colin氏のcomp.sys.amiga.misc(5/15)への投稿と Patrick Anderson氏のレポート記事などはWoA会場の雰囲気とともに、その内容をよく伝えてくれます。
この後者の記事を参考にしてまとめると、
1.OS4.0を11月にリリースする
2.OS4.0は"Amiga Bridge"(恐らくSiameseとAmiga Forever?)とを介して、x86マシンで作動する。
3.OS4.0は開発者向けのものであり、この結果としてOS5.0を99年末に発表する。
4."digital convergence"
5.新しい技術の開発
6.約一箇月後に新たなアナウンスを行う
Intelアーキテクチャを全面的に採用してMotololaを捨てるともいっていないし、ニューマシンを作らないといっているわけで
もない。つまり、15日の発表はあくまでも開発者向けのものであって、それ以上の発表はほとんど何もされていないのである。
むしろ、一箇月後にアナウンスをすると言う点に、Amiga Incの意図があるのかもしれない。つまり、関係者や市場の反応をみる
ということである。マスコミに関しては、そこそこ幅広く多少センセーショナルに書いてもらえたといえそうです。
・p5とh&pの和解の意義
関係者という点では、p5とh&pの和解は大きな動きといっていいでしょう。この他にもIndexが動きをみせています
Interview with Mick Tinker。共通しているのはPowerPCで作動するアミーガ
の開発を推し進めることであり、それに対してAmiga Inc/Internationalからの協力を取付けることにあるとみていいでしょう。
長期的にみれば、より多くの開発者の参入を促すことが、Amiga Incの仕事になるでしょうが、今の現実からすれば、彼らには提
示できる技術もなにもないし、有力なハードを作っているphase5のような会社は無視できない存在であるはずです。いずれは、現
在のアミーガを放りだして、全くのニューマシンを提出する時がくるでしょうが(本当にマシンを作成するのなら、あるいはそれは
A/boxやpiosかもしれない、、、)、それは彼らが以前示したロードマップでは21世紀になるはずでした。とすれば、それまでいかに
既存のボードを生かして、拡張していくかに、現在のユーザの興味はあるのでしょうし、AInc/Intも了解しているはずです。例えば
、ありえないといわれていた、1200用のzorro slot拡張も現実のものとなっています。もちろんコンピュータの機能の中心である、CPU
のパワーアップは欠かせないものであり、phase5のPowerPCによる解決はその最先端にあるものだといえます。将来的には、
Amiga Incの意図するマルチプラットォーム化は避けられないものであるとしても、短期的にみて、既存のコミュニティの維持と発展に
は、現在の有力なサードパーティの存在は欠かせないものであるでしょう。
今回「巨人」phase5が膝を屈した形になりましたが、今後もまだ同社は低姿勢を続けていくべきだろうと、その他のデベロッパに対
して「寛容」であって欲しいと思います。しかしそのことがシーン全体を活性化を促進することに役立つだろうし、そのことは結果とし
てphase5の利益にかなうに違いないと、僕は楽観視しています。
・アミーガらしさ。
最終的に、あるいは基本的に、どのような変化が「アミーガ」というブランドネームをつけた製品に生じようとも、「アミーガらし
さ」とはなんであるかを問い返すことが必要となるでしょう。各人、それぞれアミーガに対する思い入れや、魅力を感じるところが違
うでしょう。
かつてAUIという雑誌は、アミーガコミュニティが牧歌的な田舎暮らしに充足していることを指摘し、批判していましたが、その状況
に転換期が近づいていることは確かであるといえそうです。今はIntelかMotololaかとか、Microsoftの支配力がどうのとか、国家権力や大
企業の関わりとかいう話が中心になるけれども、この先には半世紀続いたコンピュータの基本設計ががらっと変わってしまわないとも限
らないし、その業界の勢力図はさらに移ろいやすいものであるし、誇大広告や力のかかるままに、唯々諾々として従う消費者がいつもお
となしい羊でいてくれるとも限らない。
アミーガが「らしく」あれた理由には、有力な後見人をもたず(もしそんなものがあれば現在Windowsという文字の乗る文脈にAmigaと
いう文字があったかも知れないということです)、サポートするはずの会社もろくな世話もしてくれないうちに勝手に倒産を繰り返して、
5年の長きにわたって放置された、という事実が、その要因としてあげられるだろう。結果、様々なサードパーティがそれを支えてくれわ
けです。
以前Jeff は「Amiga Incは小さく、小回りのきく会社でありたい」という旨の発言をしていましたが、恐らくそれはAmiga Incを中心とし
て、大小の様々なデベロッパがアイデアと製品をもちより、それにたいしてIncが互換性の保持をおこない、Internationalがライセンスを供
与するという形です。いわば緩やかな連合帯なのだと、僕は考えていました。当然それが成立するためには、突出した力をもった会社が、
力をふるうということはあってはならないわけです。その意味でも、phase5の今回の動きは歓迎できます。
Amiga IncはR&D会社です。単に好きなマシンをつくる同好会ではなく、社会的に政治的に、業界や市場の動向を見極めて、尚且つ親会社
に対して利益をもたらす必要があります。WoAの発表にしても、それまでに15の企画を提出して、ようやく発表の2週間前に承認にこぎつけ
たと氏は語っています。
いわば、社会とか個人の生活、政治や経済動向を含めて、思想的にどのようにアミーガが展開するか、という点が「アミーガ」というブラン
ドに関わってくるといえるわけで、果たしてアミーガがひとつの思想足りうるか、あるいはただの凡百な一商品に成り下がるか、Jeffの舵取
りは微妙なものだといえそうです。
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それにしても「アミーガらしさ」は単に個々人がどうかんがえるか、という狭い範囲での個別の充足感に終始するものなのか。Amiga Inc
はじいちゃんばあちゃんの使い勝手を基準として「使いやすさ」を計るそうだが、「使いやすさ」の定義とはなんなのだろうか。例えば「シ
ェル」のないアミーガは「アミーガらしい」だろうか?